心のままに〜生きづらさの克服

毒親育ちのアダルトチルドレンが自分を救ってきた日々

温かい人

 

 

 

その時、私は慌てていました。

 

ある公演を観に劇場に向かっていたのですが

道に迷ってしまい、公演開始時間が

間近に迫っていたのです。

 

 

 

とても楽しみにしていた公演なので

開始時間に間に合わないなんて悲しい!

と焦っていました。

 

もう恥も外聞もなく

そこら辺の人をとっ捕まえて

「○○劇場はどう行ったらいいんですか?」

と聞きまくっていました。

 

でも、何人かの人に聞いても

みんな「知りません」「わかりません」

と言うのです。

 

誰に聞いても、みんな知らないと言う。

もう公演開始には間に合わない。

私は泣きたい気持ちになり

「どうしよう!どうしよう!」と

パニックに陥りました。

 

 

 

 

 

その時です。

 

「○○劇場に行きたいの?」

と、声をかけてきた人がいました。

 

振り向くと、それは

ホームレス風の身なりのおじさんでした。

 

私は、コンマ1秒躊躇しましたが

次の瞬間には「そうなんです!!」

と、そのおじさんにすがっていました。

 

すると、おじさんは劇場への行き方を

「この道をこう行って、次をこう行って…」

と説明してくれました。

 

ところが、道のりがややこしくて

私は内心「お、覚えられない…」と

不安に思いました。

 

でも、わからなくなったら

またその場で人に聞けばいいか、なんて

思いながら説明を聞いていました。

 

すると、おじさんは

明らかに理解してない私の表情を見て

「俺、ちょうどそっちに用事があるから

途中まで一緒に行ってやるよ」と言うのです。

 

そして、言うなり走り出しました。

おじさんは、私がかなり急いでいることも

わかっているのでした。

 

私は、おじさんが一緒に来てくれることに

安心して、とても心強く思いました。

そして、おじさんと共に走りました。

 

今思い出すと、お洒落な繁華街を

おじさんとふたりで走っている図が

自分でもおかしくて笑いが込み上げてきます。

 

 

 

そして、「ここならもうわかる」

という所まできて

「あ!こっちですね?」とわかった様子の

私を見て、おじさんは去って行きました。

 

私は「ありがとうございました!!」と

頭を下げて一言言うのが精一杯で

そのまま猛ダッシュで劇場に入りました。

 

 

 

 

 

公演は、残念ながら始まっていて

5分の遅刻でした。

 

でも、あそこでおじさんが現れなかったら

どれだけ遅れていただろうか

おじさんが一緒に走ってくれなかったら

ちゃんと辿り着けただろうか

と思うとゾッとしました。

 

私は、確かに

あのおじさんに救われたのです。

おじさんは私を助けてくれたのです。

 

 

 

 

 

別れる時、私が「ありがとうございました!」

と言うと、おじさんは

笑って手を振ってくれました。

 

もっとちゃんとお礼を言いたかった。

もっとちゃんと感謝の気持ちを伝えたかった。

それが心残りです。

 

 

 

 

今でも、この時のことを思い出すと

心が温かくなります。

 

おじさんの優しさ、気遣い、思いやりなど

おじさんの優しい心を思い出すと

涙が出そうになります。

 

今でも「ありがとう、ありがとう」と

感謝の念が湧いてきます。

おじさんの優しい心に触れられた私は

幸せものだなと思いました。

 

 

 

おじさんはすべてわかっていました。

私が劇場がわからなくて泣きそうなこと。

時間に遅れそうですごく焦っていること。

道の説明を聞いても不安に思ってること。

 

そして、それらすべてに

救いの手を差し伸べてくれたのです。

 

それは、まるで

親が愛する子どもに向けるような

無償の愛のようでした。

 

 

 

 

私は、密かに

あのおじさんは天使だったのではないか

と思っています。

 

普段はそれを隠していて

私のように困っている人がいると

サッと現れて助けてくれ

その人が大丈夫になると

またサッと姿を消してしまう。

 

そんな妄想をしています。

 

 

 

そのくらい温かい人でした。

 

身なりを見て、一瞬怯んだ自分を

恥ずかしいと思いました。

 

 

 

人を見る時は

表面上に現れているもの、すなわち

身なりや表情、発する言葉だけでなく

その奥にあるその人の本質を見るように

奥行きのある見方をしようと思いました。

 

どんな人でも

表面に現れているところだけが

その人なのではないのです。

 

人間とは、複雑で

どこまでも深く

おもしろい存在なのだと思いました。

 

 

 

ちなみに、そんなに道に迷うなら

Googleマップ使えばいいんじゃない?

と思われた方もいらっしゃるかもしれませんが

私は、Googleマップを使っても

地図を見ながらでも

反対に歩いて行ってしまうほどの

方向音痴です。

 

 

 

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